天堂と十六夜


愁穂が十六夜をつれてきたのは洞窟。奥へ奥へと進み見たものは祭壇と、そして祭壇を囲むようにして灯された何重もの蝋燭。



「十六夜殿、愛しています…しかし身籠っているあなたを愛せませぬ……今すぐに子を葬ってさしあげます…そのあとにゆっくり愛を確かめ合いたい…」



気絶している十六夜を祭壇の上に寝かせて唇を触った後、蝋燭を隔てて祭壇の前に座った



「あなたを拐うため今までの間学びに学んだ呪詛……」



茶色の大きい数珠を首にかけて唱え始めると赤色や橙色だった蝋燭の炎は不気味な青色や白色へと変色した



しばらくすると十六夜は顔をしかめて呻き声をあげて汗をかきはじめた



「ん、……ぅ、…くっ、」


十六夜は全身を焼かれるような苦痛に目を覚ました。虚ろな目で何とか顔を横に向けると愁穂と目があった



「しゅ、…すい、さん…」


「目覚めましたか…もう少しお待ちください。今から子を葬ってさしあげますから…」


突然激しさが増した呪詛に十六夜は身体の動きを制限されてもがくことも許されずただ呻き声をあげるしかなかった



「あ、なたっ……」


必死に愛しい者の名を呼ぶ…






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