天堂と十六夜



十六夜は自室で雁蔵の診察をしてもらっていたが目を開けなかった


百鬼たちは大広間で結果を待ったり負傷した者の手当をしていた


「十六夜と腹の子は!?」


障子が乱暴に開け放たれ天堂が汗をかき息を切らして入ってきた



「お静かに。腹の子は大丈夫ですぞ…………しかし十六夜様は……」




雁蔵の表情に焦りを覚えた天堂は、雁蔵に詰め寄った



「十六夜が、何だ…」



表情を曇らせ言い憎そうに口を開いた



「十六夜様は腹の子を失わぬ様、苦しんでいる間ずっと、自らの妖力を全てと言っていいほど腹の子へと注いでいたみたいでの…妖力は妖怪の源………その妖力を殆ど子へと注げば当然十六夜様の妖力は無くなっていく…もう臨月。三日経っても体力が回復せずに意識が戻らなければ……意味が分かりまするな…最悪の場合、子だけでも取り上げることはできまするが…」




「嘘だろ…つまり…命と引き換えにってことかっ…」


脱力したようにその場に崩れた天堂を雁蔵が厳しく叱咤する



「総大将っ、しっかりしなされ!まだそうと決まった訳ではない!十六夜様の気力次第じゃ!総大将は十六夜様を信じて待ちなされ!大丈夫じゃっ、十六夜様なら…"白夜叉"なら必ず目を覚まされるはずずじゃ!」



涙を流していた天堂は雁蔵に励まされて何とか正気を保ち力無くだが笑った


「そうだよな、起きたときにワシが元気なかったら駄目だよな…」


「そうですぞ、百鬼たちも不安になりまする。十六夜様なら大丈夫じゃ。こんな強い方はそうそう居らん。総大将は本当にいい嫁さんを貰ったでの……手を握って話しかけてみるといい。聞こえている時もあるからな…必ずや目を覚ます……それから今日はここに泊まらせてもらうからの」



「…あぁ、その方がワシも助かる」



雁蔵は二人にするため百鬼たちの居る大広間へと向かった






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