天堂と十六夜

出産




もう卯月。本家の庭には桜の大樹があり、綺麗に花をつけていた。出産はいつ始まってもおかしくないということで雁蔵と妻の鶴を呼んでいた



先程まで百鬼と家事をしていたが疲れたため、かけ布団を掛けて布団に座って腹が大きくなって座るのも一苦労なため背凭れに凭れていた。身体を冷やさないように天堂の羽織りも肩に掛け、障子を開けて温かい風に吹かれながら天気の良さに目を閉じて昼の日を浴びていた




一際強い風が吹いて目を開けると畳に花弁が落ちていて掌に乗せた



授かってからの月日が長いような短いような…生きているという中で時の流れは不思議の一つだな、と考えていると天堂が入って来た 



「どうじゃ?」


「ん、何とも…」



障子に凭れて十六夜と手を繋いだ。天堂の温かさに心までほっこりする。布団の上から優しく撫でてくれる手に手を重ねる



日の光で目を閉じていても明るく感じるが影が差した。それと同時に唇に柔らかいものが…それはすぐに離れていき目を開けるとこれ以上ないくらいの優しい顔で十六夜を見ていた。その視線には愛しい者を見るかのよう








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