天堂と十六夜
「陣痛が始まったわ。あんた、盥に湯を張っておくれ……あと手拭いもっ」
「おおっ、そうじゃ」
さすがだ。出産のことに関しては知識が豊富なため的確に指示を出す
準備をするために自室から出て行った雁蔵
その間天堂は手で額の汗を拭いてやったり手を握っていた
鶴は十六夜の足の方へ座り、天堂は十六夜の手を握ってやっていて十六夜が痛みに耐えて自分の手を傷つけないようにしていた
「頑張る、からっ…っ!」
「あぁ、ワシもついてるからな。安心しろ…元気な子を産もうな」
天堂の笑顔に頷いた十六夜は力み、産むことに集中した
歯を食いしばり悲痛な声をあげ続ける十六夜に耳を塞ぎたくなる天堂だが十六夜が死ぬ思いをして頑張っているのだ
愛している女が命懸けで自分たちの子を産んでいる
こんな感動的なことはない
頑張っている姿から目を逸らしてはいけない。自分だけ逃げられない。目の前の現実と向き合わなければ……
「んっ、……いっ……っ!」
「十六夜様、頑張ってくださいよ…………あ、頭が出てきましたよっ…ほら力んでっ」
「んんっ!……!……っ」
鶴の声に合わせて力み、天堂は十六夜の汗を手拭いで拭いてやり手を握って声をかけ続けていた