天堂と十六夜
十六夜が最後の力をふりしぼって握った手にこれ以上ないくらいに力をこめる
十六夜の力に手が握り潰されそうな天堂だが離すことはせずに天堂も手に力をこめて声をかけ続けた
――そしてその瞬間がやってきた
「おぎゃあっ、…おぎゃあ!」
「産まれましたよっ十六夜様!……ああっ、元気な男の子です!」
聞こえた愛しい声に力が抜けてはあっと息を吐いた
天堂は手拭いで十六夜の汗を拭いながら優しい表情で十六夜を見つめた
「さぁ十六夜様抱いてください…」
鶴が十六夜の胸へと子を渡し、産まれてきた子を見た十六夜は今までの痛みを忘れて嬉しさに涙を流し続けた
子はまだ開いていない目だが母の姿を探して手を少し伸ばす。十六夜はその手を握り潰さないように持って少し揺らした
「…お母さんを必死に探してるのね……」
鶴のほっこりした声が聞こえ、十六夜は微笑んだ
「…あなた、抱っこしてあげて」
子を渡された天堂は十六夜同様に微笑んで嬉し涙を流した
「可愛いな……十六夜、頑張ったな…」
天堂は子のふわふわな頬を指の背で何度も撫でた
「…産まれてきてくれてありがとう」
十六夜の言葉に今度は全員が涙した