天堂と十六夜
「小さい頃から両親がいなくて関わりがなかったから、"親"っていう存在がどういうものか分からなくて…あなたと夫婦になってからもそんな不安があった…だけど今こうやって桜ちゃんを抱っこできてお乳を与えて、母親としての役目が出来て嬉しいの…朔も失って独りだったから、あなたと"家族"になれてよかったです…ありがとう」
潤んでいる十六夜の肩を抱き寄せてその手で頭を撫でた
「ワシも同じだぜ?父親にしてくれてありがとな、今すげぇ幸せじゃ」
「あぅ、ぅ~…きゃ!」
「おお、そうかそうか。お前もワシらと家族になれてよかったか!」
笑いながら天堂に手を伸ばしてきた桜李を十六夜から渡してもらい抱っこする
桜李は十六夜が大好きだが天堂のことも大好きだ。この笑顔も父親に似ている、と思うのは気のせいだろうか
「よしっ、乳も飲んで腹いっぱいになっただろ、軽く散歩にでも行くか」
十六夜に桜李を渡して手を引いて外へ出ると百鬼たちがいた
「桜李様っ」
百鬼たちが群がり十六夜の腕に抱っこされている桜李を笑わせたり頬をつんつんし始めた
「お出かけですか?」
「うん、散歩に行ってきます」
「気をつけて」
十夜や百鬼たちに見送られて向かったのは夫婦で一度だけ訪れた絨毯のような花畑、小さな湖がある場所だった