天堂と十六夜



「総大将、男の子で良かったですね」


「二代目になるんですから……何しろ可愛いっ」


「おいらも思う。でも子沢山もいいな」


「…そうじゃな」



百鬼夜行中、先頭を行く天堂にわらわらやって来た百鬼たちは桜李の誕生を喜び、桜李の遊び相手にもなってくれている




桜李が男で世継ぎも出来たためもう子をもうける必要はなくなった。だが百鬼のいうように子沢山もいいな、と桜李を見て思った


しかし桜李を産んだ直後、天堂は雁蔵と鶴に呼び出されたのだ



『総大将、十六夜様は無事に桜李様を産みました…愁穂に何をされたかは見ていないので分かりませぬが、あの時の十六夜様の妖力の消耗は著しかった…懸命に妖力を桜李様に注がれて守られ、目を覚ましたな。先程も言いましたが、妖力の消耗は著しかったため桜李様を産んだことも奇跡のようなもの…今後授かることは……皆無、と言っていいですな……』




それを聞いたとき、一瞬意識が飛んだ気がした。確かに世間では"奇跡の子"と言われている。世継ぎもいるし十六夜に何度も痛く辛い思いをさせたくないというふうに思っていたが、まさかこんな形で実現されようとしているとは…



それを聞いた十六夜はただ涙を流すだけだった。授かれない悲しい涙と、それでも一人の宝が出来た嬉し涙という二つの意味を持った



涙を流し続ける十六夜を抱き締めて複雑な思いを分かち合ったのもついこの間。十六夜の涙を見て、何がなんでも桜李を守り通すと誓った
















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