天堂と十六夜
十六夜は桜李の涙を拭いながら笑って頷く
「お父さんはね、桜ちゃんを危険な目に遭わせたくないの…」
「でも、とうちゃん、つよいんでしょ…?だったら、…」
「強いわよ?でもね、だからって絶対に、完璧に守れるとは限らないの」
「……」
「桜ちゃん、言ったよね?お母さん白夜叉で強かったんでしょ?って…でもねお母さんも実は桜ちゃんを産む時になって妖怪に拐われて…お母さん、死にそうだったんだって」
「え、……」
蒼白になった桜李を十六夜は膝に抱き上げて頭を撫でて抱き締める
「でも桜ちゃんを産めてお母さんも生きてるのは百鬼たちと…お父さんが助けてくれたからよ…」
息を呑む音が聞こえて十六夜は安心させるように背中をぽんぽんと叩く
「難しいお話だよね…お母さんが言いたいのはね、どんなに強いひとでも守れないこともある、ってこと。お父さんはそれを分かってる。桜ちゃんを守れなかったら…なんて考えたくない。だからお父さんは桜ちゃんを連れて行きたくないの……お父さんだけじゃないよ?お母さんも桜ちゃんが怪我したりするのは見たくないの…大変な目に遭ったよね?……お母さんあの時怖かった、桜ちゃんに何かあったらって考えただけで…」
「かあちゃん……」
十六夜の震えた声に桜李は分かった気がした。自分はまだ何も出来ないのだ、と。だからーー
「とうちゃんとかあちゃんの気持ち分かったよ……だからとうちゃんにあやまってみる…」
「お父さんならきっと分かってくれる。お母さんも一緒に居るから…」