花は桜木、人は君。
葛城紫園(カツラギシオン)中学二年生。
特技は"笑顔の振り"。
「おはようお母さん。」
「あら、紫園早いわね。ご飯できてるよ」
「ありがとう。でもごめん。今日はお腹空いてないから。」
「そう…じゃあいってらっしゃい」
「……行ってきます。」
お母さんは、いい人だ。
優しいししっかりしている。
ただ、私が一方的にあの人のことを嫌ってるだけ。
「先生、おはようございます。」
「あら葛城さんおはよう。今日も頼めるかしら?」
「大丈夫です。やっておきますね」
「助かるわぁ。ホントに、葛城さんはいい子ね。」
「いえいえ。ありがとうございます。では。」
先生から頼まれる雑務を笑顔で引き受け、完璧にこなす、それが私の仕事。
「紫園ーおはよー」
「あ、美姫おはよう。」
「ごめん!宿題みせてくんない?」
「うん。いいよ。」
クラスメイトの山川美姫(ヤマカワミキ)。
髪を茶色に染めていかにもギャルなこの子。
クラスのリーダー格のこの子の我が儘や自慢に嫌な顔ひとつせずに付き合う、それも私の仕事。
そう。
学校でも家でも、私の分類は「優等生のいい子」。
その役柄を生きることが、私の仕事。