黎明の舞踏会 第1章
十二の約束
私と俺と、そして僕
近所に誰かが越してきたらしい。
ああ、あの赤塗りの家だろう。
聞く話によれば、歳をくった婦人とスーツの強面のおじさん、あと……12歳の男の子。
私と同い年だ。
「アリア!新しく越してきたお家にパン届けてきてちょうだい!」
そんなことを考えていたら、まるで図っていたかのような母のタイミングのよいその一言。
身体が跳ね上がる。
出来立ての香ばしいパンの匂いを掠めて、笑みを溢す。
「わかった!」