黎明の舞踏会 第1章
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赤塗りの家の前には、小さな人だかりがあった。
ここの風習で、近所の人は新しく来た人々を快く迎えるため、ささやかなおもてなしをするのだ。
私の家でも母が先ほど焼いたパンがそうだ。
それをバスケットに入れて、ささやかな贈り物。
「お、アリアじゃん!」
馴染み深い声をたどれば、サッパリした黒髪の下、どんぐりみたいなグリグリした目が私を捉えてた。
思ったとおりの人物が、あの家の玄関前に…。
「レットも来たんだ?」