白銀の女神 紅の王(番外編)


「私のせいでエレナ様を危険な目に合わせてしまってすみませんでした。まさか本当に国王のお妃様だったなんて…」


ノーラのこの言葉にはエレナも我に返ったように首を振る。




「妃だからというのは関係ないわ」


エレナは妃である自分に謝ってほしくなかったのだ。

ノーラに負い目を感じてほしくなかったからだろう。



「それに悪いのはあちらの方よ。誘いを断っただけで手を挙げるなんて紳士じゃないものね」


微笑んだエレナにノーラは泣きそうな表情をして肩をすくめる。



「けど私の態度も悪かったと思うから…」




「全くだ」


もごもごとだがノーラが自分の非を認める言葉を口にしていると、別の声が割って入った。





「グリッド侯爵!?」


ウィルの驚いた声が部屋に響きわたる。

それもそうだろう、開けっ放しの扉から入ってきたのはノース地区の貴族、グリッドだった。

グリッドと面識のあるのは俺とウィルだけのはずだが、思わぬところから声が上がる。





「お父様!」

「お父様!?」



ウィルが素っ頓狂な声を上げてノーラとグリッドを交互に見た。

よく見てみれば細く長い目も、スッと通った鼻筋もよく似ている。

ウィルも家出したグリッドの娘とはノーラのことだったのかと重い至ったことだろう。



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