白銀の女神 紅の王(番外編)
「じゃぁ私も早く風邪を治して戻らなきゃね」
「そうですね。着いたらゆっくり休んでください」
ニーナの言葉に頷くも、ふとそもそもの話を思い出した。
「そういえば私たちはサウス地区のどこへ向かっているの?」
私が城を出ると言っておきながら、アークで最も治安の良いサウス地区を目的地にすること以外は全くの無計画だったことに気づく。
ニーナは私の焦る表情をみて目を丸くして、今更なことを言う私に耐えきれないというように笑った。
「今から行くところはシルバ様が幼少の頃お世話になった方のお家です。フェルトさんというおばあさんが一人で暮らしているんですよ」
ニーナの言葉に笑みが消え、和やかだった雰囲気は少し重くなる。
「シルバが幼少の頃って…ご両親を亡くした後?」
おずおずと聞いた私にニーナはゆっくり頷く。
「シルバ様のご両親が暗殺された後、先々代の国王派だった家臣たちはシルバ様をサウス地区へ避難させました。その時、お世話になったのがフェルトさんだったんです」
シルバたちのご両親が亡くなった時、アイザックス王はシルバの親族まで手に掛けたという。
ご両親を殺され、親族までいなくなり、シルバの心のより所は一瞬でなくなったのだ。