白銀の女神 紅の王(番外編)
数時間ほど荷馬車に揺られた後、ギギッという車輪の音を立てて荷馬車が止まる。
浅い眠りについていた私はすぐに目を覚まし、ゆっくりと体を起こす。
するとニーナはすでに荷馬車から降りて誰かを探していた。
起こした体を侍女に支えてもらいながら立ち上がり、荷台のの後ろへ移動すると、ニーナは目的の人物が目に入ったようで、パァっと笑顔になって手を振る。
「フェルトさんお久しぶりです」
ニーナが手を振った先には初老の女性が畑を耕していた。
フェルトと呼ばれた初老の女性は鍬を休めてこちらを振り返る。
背を伸ばしてみれば案外体つきはしっかりしていて、おばあさんと呼ぶには若いような気がした。
あちらもニーナを認めるやいなや手を振ってこちらへやってきた。
「久しぶりじゃなニーナ」
近くに来ると年齢相応だということがわかる。
腰は曲がっていないものの顔や手には皺があり、畑作業のせいか染みが所々にある。
「遠いところよく来たな」
「はい!けど今日は一人じゃないんですよ。ほら、以前にお話したエレナ様をお連れしたんです」
突然二人の視線がこちらに向き、慌てて荷台から降りて初老の女性の前に立つ。
シルバの育ての親ともあり、緊張しながら頭を下げた。