白銀の女神 紅の王(番外編)
「は、初めまして、エレナと申します」
「フェルトじゃ」
あれ……?
心なしかニーナに向けた声に比べてぶっきらぼうに聞こえた。
初対面の人を警戒するのは仕方のないことなのかもしれない。
「エレナ様は少し具合が悪くて、ここで暫く療養させていただきたくて来たんです」
ニーナはフェルトの様子に気づくことなく笑顔でそう言う。
するとフェルトは顔をしかめて口を開く。
「好きにせい。但し、ただでここに居させるわけにはいかん」
「分かっていますって。私がエレナ様の分も働きます!」
「ならん。自分の食い扶持は自分で働いて稼ぐのがノーラン家の家訓じゃ」
どうやらフェルトの家では働かざる者食うべからず主義のようだ。
城では多くの侍女が私の身の回りのことを全てしてしまうため、ノーラン家の家訓は私にとって嬉しいものだった。
しかしニーナは戸惑いながら口を開く。