白銀の女神 紅の王(番外編)
「ふーん、名前は?」
「エレナです」
言ってしまった後、ハッと我に返る。
本名を言ってしまうなんて私の馬鹿!
これにはニーナも焦って息を飲んだ。
しかし、ブルームは私の名を聞いてもピンときておらず、名前よりも髪の毛の方に興味を持ったようだ。
「珍しい毛色の髪だな。たしか国王の寵姫も銀色の髪だと聞いたが流行っているのか?」
「そ、そうなの。中央ではお妃様の髪の色に憧れて髪の色を変える人も出てきているのよ」
「キレーに染まるもんだな」
疑うことを知らないのか、少し苦しい言い訳も信じるブルーム。
おそらく年上だが、爽やかな外見も相まって、純粋な少年のように見える。
「それよりブルームさん、ここには何用で?」
ニーナは話題を変えるようにブルームに問いかける。
するとブルームは思いだしたように手を叩いた。
「お!そうだそうだ。昨日フェルトさんから風邪っぴきがくるから薬を持ってくるよう頼まれてたんだ。この家には薬の類は一切ないからな」
そう言って背に抱えていた麻袋から紙に包まれた薬を取り出す。
薬を持ってきたという割には大きな麻袋だと思ったら、ブルームは薬に引き続き何かを取り出す。