白銀の女神 紅の王(番外編)
それは国王への冒涜ととりますよ
スタスタと早歩きで屋敷の中を歩く数人の足音。
窓から覗く庭の木々はうっすらと雪化粧を纏い、屋敷の中でも空気が冷たい。
中央区では木枯らしが吹く程度の寒さだが、このノース地区ではもう雪がちらついているので無理もない。
会議が開かれるこの屋敷に着いたのは今しがたのことであり、先ほどから前を歩く初老の男は先ほどから一度もこちらを振り返らずに歩を進めている。
沈黙に耐えきれなかったのだろう、後ろを歩いていたウィルが俺の横に並び、小さい声で囁く。
「あまり歓迎されないだろうとは思っていましたがこれほどとは思いませんでした。一体先代の王はどのような統治をしていたんでしょうね」
いくら声をひそめたとはいえ、静かな廊下では十分響く。
屋敷の執事であろう初老の男はウィルの声が聞こえていただろうに我関せずの姿勢で歩き続けている。