白銀の女神 紅の王(番外編)
「このノース地区は金が採れる鉱山が数多くあり、他国への輸出で収入を得ていると聞いています。貴公としても他国への整備された安全な輸出ルートを確保したいのではありませんか?」
ウィルの問いかけに貴族たちは何も答えられず苦渋の表情を浮かべる。
「国に任せてもらえば半年で他国や国内のルートの整備ができる。我々としても今ここでノース地区の地権を手に入れることは非常に重要な意味をなすんですよ」
グリッドに向けて真摯な想いを告げる。
国が地権を有することの重要性についてはグリッドたちも分かっているはずだ。
しかし、ことはそう簡単に進むものではない。
「我々は今までも我々だけでやってきた。それを即位たったの数年の国王にとやかく言われる筋合いはない」
「グリッド侯爵それは国王への冒涜ととりますよ」
低くそう告げたウィルの雰囲気ががらりと変わる。
「ウィル、いい」
「しかしシルバ!」
悔しそうに顔を歪めて声を荒げるウィルは珍しく俺に反発する。
こういう時に真っ先に怒ってくれるからこそ俺は冷静になれる。
「いいと言っているだろ」
フッと笑えば、ウィルは罰が悪そうに口を噤み、肩の力を抜く。