白銀の女神 紅の王(番外編)
「お菓子上げるわよー。欲しいなら返事なさい」
「はーい」
「ここだよー」
子供たちに薄情といっても無駄だろうが、お菓子という言葉が聞こえた瞬間アベルとココットの瞳は輝き、それはもう一瞬のうちにブルームを裏切った。
「ッおい!お前ら何で返事するんだ!」
ブルームがマズイと思って口を押さえた時には既に遅く、裏にひょこっと現れた女性。
「そこにいたのね」
「ノーラ……」
フフッと嬉しそうに笑った女性はここら辺では見ない格好をしていた。
サウス地区に住む民はほとんどが農業に関わっている者で、身につけている衣服は赤褐色が多かった。
しかし、ノーラと呼ばれた女性はローブこそ纏っているものの、その下は鮮やかな若草色のワンピースを着ており、指輪やネックレスなどの装飾品もこの土地では異様に見えた。
「お前またサウスに来てたのか…」
「何?私は来ちゃ悪いの?」
溜息混じりに口にしたブルームの言葉にノーラは反発する。