白銀の女神 紅の王(番外編)
私もやっと意味が分かり、同時にブルームに詰め寄るノーラの気持ちにも気づいた。
「ここには薬がないだろ?俺はこき使われてるだけだ」
「だったら毎日通うんじゃなく、まとめて持ってくればいいじゃない」
ノーラの少しつり上がった目は特徴的で、強気な性格も相まってきつい印象を抱きがちだが、少し涙目で訴える姿を見て、なんだか微笑ましくなった。
しかし、私の想いとは裏腹に二人のやり取りは段々険悪なものとなる。
「お前にとやかく言われる必要はないだろ」
「ッ…もういい!」
決定的ともいえるブルームの言葉にノーラは息を詰まらせて口を噤んだ後、フルフルと震えながら吐き捨てる様にそう言って反対方向へ走り出した。
突然の事に慌てたのはブルームで、走り去っていくノーラを追いかける。
「おい!ノーラ!待てって」
案外ブルームも満更でもないのかもしれない。
とは言うものの、先ほどの言い方は誤解を招くには十分だった。
「大丈夫かしら」
「大丈夫ですよ。あの二人はいつもあんな感じですから」
二人の事が少し心配だったものの、旧知の仲のニーナが落ち着いた様子だったのでひとまずは安堵する。
仲直りできると良いけど…
そんなことを思いながら残りの洗濯物を干した。