白銀の女神 紅の王(番外編)
会議は延期になりました
「今日の会議は延期になりました」
それはノース地区に来て4日目のことだった。
滞在中世話になっている屋敷の一室でたまった書類を片づけていると、ウィルが部屋に入ってくるなり溜息を吐きながらそういった。
その手には伝令者から受け取った通達書が握られている。
「何故だ」
4日も経ち、未だ平行線となっているこの状況に苛立ちと焦りもあり、鋭い声をウィルに向ける。
「通達書には会議が延期ということしかかかれていないのですが、聞くところによると侯爵の娘が家出をして、侯爵が自ら迎えに行ったようなんです」
ウィルは脱力したようにそう話し、ソファーに深く座り込む。
天井を仰ぐその表情には呆れと焦りが伺えた。
4日前から開かれている会議は毎日行われているが、未だ両者が納得する収まりどころが見えずに難航してた。
こちらがどんな高条件を出そうと、グリッドが首を縦に振ろうとしないためだ。
よほど国家に対する恨みが募っているのだろうことはこの4日間で十分伝わった。
「侯爵はよほど娘のことを可愛がっているんでしょうね」
グリッドが本当に娘の家出を追いかけていったとしたら、それはそれでグリッドも血の通った男なのだろうと思い、この交渉にもまだ希望は持てるだろう。
しかし…―――