白銀の女神 紅の王(番外編)
「ノース地区の地権者である有力貴族も多く集まる大事な会議になりますから、エレナさんも貴方に風邪を移す訳にはいかないと思ったんでしょうね。エレナさんの好意を無駄にしてはいけませんよ」
「分かっている」
何かとエレナを掛け合いに出すウィルの言葉には、俺をエレナの元へ向かわせまいという魂胆が見え見えだ。
「まぁ視察と会議で数日はかかるでしょうから、それまでにはエレナさんも帰ってくるでしょう」
風邪なら数日で帰ってくるだろうが、問題は俺たちの方だ。
明日からノース地区で開かれる会議は重要な会議になる。
要はノース地区の土地開拓を国でやることを地元貴族たちに承認させたいという話であり、これは本来ならば宰相であるウィルがまとめる話だ。
しかし、ノース地区の地元貴族と国家との間には決定的な亀裂があり、頑として首を縦に振ろうとしない。
これには半年も前から交渉を続けているウィルも頭を悩ませているようで、今回俺自らが現地へ行くことになったのだ。