白銀の女神 紅の王(番外編)
「貴方はエレナさんのこととなると本当に過保護ですね。エレナさんももうこの国の王妃なのですから、少しは一人立ちしてもらわなければいけないんですよ?」
「お前の言うことも分かるが、あのフェルトがエレナに何もしないと思うか?」
頭に浮かぶのは陽気に笑う初老の女性。
もう年だというのに快活で、時に男よりも勇ましく、気に入らないものは一切寄せ付けない。
俺の心配を余所にウィルは何を考えているか分からない笑みを浮かべる。
「何もしないわけがないでしょうね」
まるで楽しんでいるかのようにそう言うウィル。
先ほどの言葉はあながち冗談ではないらしい。
確かにエレナを常に傍に置いておくことは出来ないし、唯一の妃としての自覚を持ってもらいたいところでもある。
ゆっくりそれを知っていき、皆に認められる日がくればいいと思っていたが、こうも早くフェルトと引き合わせることになるとは…
夕焼けに染まり始めた窓の外に目を向け、少しばかりの不安を覚えた。