白銀の女神 紅の王(番外編)
不意にきた振動に皆とっさに付近のものに掴まるが、荷台の上に横になっていた私は思いきり頭をぶつけた。
「エレナ様ッ!」
「だ、大丈夫。少し打っただけ」
頭をさすりながら笑えば、ニーナは少しほっとしたような顔をして、すぐに申し訳なさそうに眉を寄せる。
「このような乗り物しか用意できずすみません」
「ううん、私がお願いしたんだから気にしないで」
今朝城を出ることを決意して十分な準備も出来ずに城を出ようとした私の考えが甘かったのだ。
あの時ウィルが旅の一行を装うことを提案してくれなければ中央区も出ることが出来なかったかもしれない。
護衛という観点からは少し問題があるが、何の問題もなくサウス地区に向かえているし、この荷馬車で移動して良かったと思う。
「本当に城を出て良かったんですか?」
ニーナから突然降ってきた言葉に少し罪悪感を覚えた。
「うん…シルバに移しちゃ大変だから…」
「それはそうですけど、いきなり城を出るとおっしゃるので驚きました。きっとシルバ様も今頃驚いていると思いますよ?」
「シルバの驚いた顔が見てみたいわ」
ふふっと笑っているとニーナが困ったように笑った。