白銀の女神 紅の王(番外編)


とりあえずはこれで一安心だ。

薬を飲んだことに安堵し、空になった器を受け取り、立ち上がろうとするとパシッと手を掴まれた。



「どこにいくの?」


不安気な銀色の瞳が俺を見上げる。

まだ胸の動悸は治まっておらず、わざとらしく視線を逸らした。




「下だ。これを返しに行ってくる」


それは口実に過ぎなかった。

今はエレナから離れた方がいいと警鐘を鳴らしていた。

しかし、捕まれた手は解かれるばかりか、ギュッと力が入る。





「シルバ…ここにいるって言った」

「すぐ戻ってくる」


聞こえ様によってはぶっきらぼうとも取れる短い返答に案の定エレナは悲しそうに眉を寄せた。


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