白銀の女神 紅の王(番外編)
お前さんを認めてやるよ
フッ…と意識が覚醒し、目を開いた時はもう朝だった。
「ッ……いた…」
小さな窓から容赦なく差し込む光に目を細めていると、頭を鈍痛が襲った。
頭の中に石でも入っているのかと思うほど重く鈍い痛みはじんじんと響いている。
体も鉛の様に重く、身じろぎしようと思った時だった。
ふと自分が何かを胸に抱える様にして持っていることに気付く。
視線を下にさげると、大きな手が私の手を握っていた。
否、正確には私がその手に指を絡ませ、あまつさえもう一方の手で抱え込むようにして触れていた。
頭の下には逞しい腕が敷かれ、背中にピタリとくっつくようにして体を包まれている。
静かな寝息を立てるその人物を起こさないようにそっと後ろを振り返ると、安らかな表情で眠るシルバがいた。
身じろぎをしても起きないところを見ると相当に疲労が溜まっているのだろう。
眠りにつく前、熱で意識が朦朧としていたためうろ覚えだが、シルバはノース地区の会議が中止になったためここに来てくれたと言っていた。
ノース地区から夜通し馬を走らせてきたとしたら私が身じろぎしただけでは起きないことも納得がいく。
絡めていた手をそっと放し、シルバを起こさないようにそっと上半身を起こす。
シルバは眉をピクリと動かしたものの、硬く閉じられた目は開かなかった。
ずっとここに居てくれたんだ……
『いかないで』
ふと昨夜シルバに告げた言葉を思い出し、顔を赤くする。
思考を鈍らせるほどの熱にかまけて、心につのっていた想いを打ち明けてしまった。