男なら♪
佐奈田とチョロとブカデン
 河本徹はいつにもなく、そわそわしていた。額に汗の粒が浮かんで、困ったことがあるように見えたが、佐奈田良夫は静観していた。

 同じ中学二年生で、同じクラスだが、特に親しくしている間柄でもないので、声はかけなかった。

 しかし、午前中の休み時間はずっと佐奈田の横を通っていたので、わずらわしく思った。

 昼休みになった。河本はやってきた。

「チョロ!」

 と、佐奈田はあだ名で呼んだ。背が小さくて、チョロチョロしているからそう呼ばれていたが、今日はいつもよりもチョロチョロしていた。

「助かった」

「助かった?」

 佐奈田は首を傾けた。

「これを見てよ」

 と、チョロは一枚の紙を佐奈田の目の前に出した。

「何これ」

 と、佐奈田は興味なく、のぞきこむと、そこには『男なら道場 一日体験入学募集中 一日でも誰でも強くなれます』と、書いてあった。


「ここに行こうかなって思って」

「行けば」

 と、佐奈田は他人事ように言い放った。
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