偶然の先にあるもの
「これからどうするの?」
「えっと、どこかで何かを食べようかと思っています」
「だったら俺と行かない?」
「誰と?」
「だから俺とだよ。日向ちゃん」
「何で知っているのですか?」

 まだ私、自己紹介をしていないよね!?

「何で俺のことを知らないの?」

 質問を質問で返さないでください!

「俺達、何度も会っているよ?」

 何度も会っている!? きっと何かの間違いよ!

「でも私、あなたのような大学生と知り合いになった記憶はありません!」
「俺、大学生じゃない・・・・・・」
「あれ?えっと・・・・・・」

 頭を必死に回転させるが、何も出てこない。

「すみません、思い出せないです」
「残念だな。じゃあ罰として、今から俺とどこかへ行こうよ」

 どんな罰だと思いながら、拒否をする。

「!? む、無理です!」
「どうして?」

 不思議そうな顔をされて、パニックになる。

「今日は一人で買い物を楽しむからです!」
「でもさっきは楽しめなかったよね?いいことと悪いことの判断がまともにできない子達のせいで・・・・・・」
「それは・・・・・・」

 彼女達が馬鹿なことをしなければ、こんな気持ちにならずに済んだだろう。

「それに俺が助けなかったら、君はどうなっていたんだろう?」
 もしかして脅迫されているの!?
 そう言われても本当に困る。
 今日は一体何なのだろう?テストが終わったばかりなのに溜息ばかり吐いている。

「幸せが逃げるよ?」
「あなたのせいです!」

 男性はやれやれといった感じの表情になっている。

「日向ちゃん、俺と一緒にいたら、君にもいいことはあるよ?」
「あなたは未来がわかるんですか?」

 質問がおかしかったのか、くすくすと笑って否定した。

「まさか。それより立ち話するのに疲れてきたから、あそこのカフェに入らない?」
「何でですか!?」
「じゃあ、向こうの可愛らしい店にする?」
「そうじゃなくて!」

 もう、何なの?どうすればいいの?
 頭が混乱しているのに、お腹が空いたと鳴っている。
 聞こえたかなと彼を見ようとしたとき、手を握られて引きずられた。振りほどこうとしても、しっかりと握られてしまっている。

「俺が奢るから行こう?」

 お願いだから、誰か助けて。
 助けを求めても、誰も私を助けてくれる人なんていなかった。
 どうしてこんなことになってしまったのだろう。
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