小さなくまさんの世界
「こんにちは!パンと飲み物をください!」
「どうぞ、好きなものを選んで」
「あの、お、お金・・・・・・」
「いいですよ。クーちゃんが最近頑張って手伝ってくれたから、今日はサービスしますって約束していたものね」
「ねー」
 そういうこと。手伝いってことはここと仲が良いってことだよね。
「パンも食べて。美味しいから!」
「う、うん」
 パンの種類が豊富だな。何にしよう。
 私達はゆっくりと見たあと、チョコチップメロンパンとクロワッサンを選んだ。飲み物はウーロン茶にした。
「美味しい!」
「うん、そうだね」
 クーちゃんの口の周りに食べかすがついていた。指でとると、さっきまで忙しく食べていたのに、じっとした。
「僕もやる!」
 小さな手を必死に伸ばしてきたので、顔を近づけると、汚れてもいないのに一生懸命拭いている。
 食べたり飲んだりしている合間に何度もそれを繰り返してきた。
 もういいよと言っても、ついているからと返されてしまった。
 店にいるくまは楽しそうに笑う始末。
 店のくまにお礼を言ったあとに事情を話したが、情報は得られなかった。
「ごめんなさい、お役に立てなくて」
「い、いえ」
「そうだ。その森にもう一度行ってみたらどうかしら?」
 森へ行けば、帰れるのかな。かといって、いつまでもここにとどまれない。
「そうします」
 店を出ると、クーちゃんもついてきている。
「クーちゃんはもう家に帰っていいよ。夕方だし・・・・・・」
 しかしクーちゃんは首を横に振るだけだった。
「行く!」
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