小さなくまさんの世界
 あきらめて森へ向かうことにした。
 しかし何も起こらない。
「もう帰れないのかな」
 クーちゃんは小さな石を渡してきた。きれいな石。
「あげるから元気を出して」
 この子なりに私を慰めてくれている?
「ありがとう。クーちゃん」
「どういたしまして」
 渡したあと、石をしばらく眺めていると、クーちゃんがいないことに気づき、かなり焦った。
「クーちゃん?どこ?クー!」
 叫んだ瞬間、強い衝撃があった。目の前にいるのはクーちゃんだった。
 私の全身が光に包まれていた。
「美海、好きだよ。本当はもっと一緒にいたいけど、ばいばいするの!」
 クーちゃんは泣きそうな顔で私を見ていた。
「私も好きだよ。忘れないからね」
 光が強くなり、クーちゃんが見えなくなった。
「美海、起きろ!」
「ん・・・・・・勇希?」
 目の前には大好きな彼がいた。
「急に倒れるからびっくりした。大丈夫か?」
 ゆっくりと頷いた。左右を見ても、クーちゃんの姿はなかった。
「あの、クーちゃんは?」
「まだ寝ぼけてやがる。もう少し休め。いいな?」
 再度頷いたあと、ポケットに違和感を覚え、手を入れると、クーちゃんからもらった石が入っていた。
 夢じゃない。あれは現実だった。
「あのね、面白い話があるから聞いてくれる?」
「いいぜ」
 それはほんの短い時間に起こった小さなくまさんの優しい物語。
< 4 / 4 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

涙のあとの笑顔

総文字数/130,151

恋愛(純愛)123ページ

表紙を見る
片翼を失った少女~壊れていく願い~

総文字数/3,731

恋愛(その他)4ページ

表紙を見る
凍りついた愛

総文字数/6,320

ミステリー・サスペンス13ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop