鏡の国のソナタ
安請け合いしたクランを、花南は艶っぽい目で見上げて顔を近づけた。

「じゃ、今日から、あたしの部屋に来る?」

花南の濡れた長い睫毛が、蠱惑的だった。

クランは、思わず半身を引いた。

「それって……」

花南は、ふわりとクランにしなだれかかり、その胸に細い指を這わせた。

「そう。誘ってるのよ……」

甘いフローラル系のコロンの香りが、クランを誘惑していた。

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