鏡の国のソナタ
心の中では、そう叫んでいた。


ドガッ!


人間が殴られる音というのは、腹の底に響くような嫌な音だ。

あれっ、と思って素奈多は目を開けた。

どこも痛くないし、衝撃も受けていない。

「うらぁ! の野郎っ!」

キレた男たちが、誰か別の人に向かって拳を振り上げていく。


ばきっ!


素奈多の目の前に、酔っぱらった若者が白目をむいて飛んできた。

あわてて道の横に避難する。

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