鏡の国のソナタ
素奈多は、涙声でつぶやいた。

漫画みたいなシーンに颯爽と登場して悪漢をノシしてしまったのが、あの、とぼけたクランだった。

クランは、ひょいと左手を差し出した。

「はい。おみやげ」

「え?」

素奈多は、クランの差し出された左手から繋がったヒモを見上げた。

彼の頭上に、赤い風船が揺れていた。

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