鏡の国のソナタ
「えっと……。ごめんな」

クランは、指先で素奈多の頬を拭った。

「やっぱり、泣いてたんだ……」

素奈多は涙を隠すように顔をうつむける。

「な、泣いてなんか……」

「とにかく、ごめん」

クランは、少し乱暴に素奈多の頭を抱き寄せた。

ちょうど、素奈多の耳がクランの胸に当たる。

――あ……しんぞーの音……。

規則正しい鼓動が、震えていた素奈多を安心させた。

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