鏡の国のソナタ
ゆらゆらと揺れる視界の中で、青年のさらさらの茶色い髪が処置室のライトに透けて金色に光っている。

涙でぼやぁっと輪郭がにじんで、真っ白な白衣を着た青年の背に金色の羽根が広がっているように見えた。


――うわ……あ。天使の羽根だぁ……。


麻酔が効いてコトンと意識が消失する瞬間、素奈多の網膜に金色の羽根の天使の姿が焼き付いた。



それが、当時、K大学医学部四年の佐藤九嵐だった。

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