鏡の国のソナタ
そう。

最初からなんでも覚えている。

大きな手も、肩の筋肉も、胸板の厚さも、初めて触れた唇の暖かさも……。

思い出して、ゾクリと体が震えた。

カァッと体の芯が熱くなった。

「でも」

花南が、深刻な声で言った。

「なんか、気になること言ってたから、ちゃんと聞いてみた方がいいかも」

急に素奈多は不安になった。

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