鏡の国のソナタ
一瞬、素奈多は息をするのを忘れた。

心臓が口から飛び出してしまったんじゃないかと思うくらい、ドキドキと大きな音をたてて鳴っていた。

「ばっ、ばっかじゃないの? こないだ産まれたばっかりなのに、どこが寿命なのよっ!」

無理矢理、笑って、素奈多は声を張り上げた。

大きく張り上げた声が、うわずっていた。

クランは、目を開けて素奈多を見上げた。

色素の薄い、茶色い瞳が、まっすぐに素奈多を見つめていた。

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