鏡の国のソナタ
床に座り込んだ男に視線は釘付けである。

クランは顔を上げ、九嵐を見てニッと笑った。

「よぉ」

ぞんざいな挨拶をする。

だが、それだけでこの研究室の人間には、事態は充分に飲み込めた。

九嵐は、後輩に目顔でドアを閉めるよう指示する。

後輩もすぐさまうなずくとドアを閉め鍵をかけた。

室内の誰もが説明しなくても事態を把握してくれたようなので、素奈多はほっとした。

いきなりつまみ出されたらどうしようかと思っていたところだ。

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