鏡の国のソナタ
移植外科実験室の中は、空気がピンと張りつめていた。

窓際の医療器具が並んだカウンターの側の事務用椅子に素奈多は座らされ、側に九嵐が立った。

「先輩、めちゃめちゃヤバイですよ……」

四年の田中が、壁にもたれて座っているクランを見て、やれやれとつぶやいた。

素奈多は、浅く息をついた。

「身勝手なのは判ってます。

でも、あたし、彼に生きていてほしいの。

クローンかもしれないけど、失敗作かもしれないけど、でも、どうしても失いたくないの!

九嵐先輩、お願いします! どうか、彼を助けてっ!」

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