鏡の国のソナタ
よく切れる刃物が皮膚を切り裂くときの痛みは、チャリチャリっていう感じなんだな、と妙に冷めた頭の隅でそんなことを思った。


「素奈多っ!」


クランが叫んだ。

絶妙のタイミングでクランはメスの刃先を握って、強引に引き剥がした。

首の皮一枚と皮下組織を指し貫いたところで、メスは素奈多の手を離れた。

泣きべその素奈多の頬に、真っ赤な血飛沫が飛ぶ。

それは、思いっきり刃先を握りしめたクランの右手から流れた鮮血だ。

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