鏡の国のソナタ
涙と同時に、少しずつ、記憶が蘇ってくる。

あれから、クランはどうなっただろう……。

個室でのうのうと寝ている自分が恨めしかった。

――クラン、死んじゃったのかな……。

たとえクローンでも、かけがえのない命を作り出して、殺したのは自分だと思った。

あのとき、興味本意で先輩の髪の毛なんか卵に入れなければ、クランは生まれてくることも、苦しむことも、死んでしまうこともなかった。



――あたしが、殺したんだね……。クラン……。

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