鏡の国のソナタ
「素奈多……」

九嵐が、あわてて素奈多に駆け寄った。

素奈多は、ぐるんぐるん回る視界をもてあましてポカポカと頭を叩いた。

激しい眩暈は、大時化の海原で小船に乗っているようだった。

素奈多は助け起こそうとした九嵐を逃がさないように、必死でしがみついた。


「うそつき!

なに、お上品な言葉使ってんのよっ!

こっちの手、出して見せてよっ!」

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