鏡の国のソナタ
素奈多は、ポケットに突っ込んでいた九嵐の右手を、無理矢理、掴み出した。

九嵐の右手には、真っ白な包帯が巻かれている。

さっき、素奈多の手に握られたメスを素手で握ったヤツがいた。

掌がざっくり切れて、大出血したに違いない。

素奈多は、眩暈でぐるぐるになった視界の中で、九嵐が悪戯っぽく笑うのを見たような気がした。



憧れの九嵐先輩は、絶対、そんな人を食ったような笑顔は見せないのだ。

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