鏡の国のソナタ
素奈多は閉じられたドアの向こうに消える足音を聞きながら、最後の涙を流した。

もう、泣かないと誓った。

もう一度、彼に会うときまで、絶対に泣かない。

ふと、寝間着の胸のあたりに光る金色の髪の毛に気づいた。

短くて細くてサラサラした髪の毛だ。そっと指先でつまみ上げた。

透かして見ると、キラキラ光っている。

クランの髪の毛だった。

素奈多は目を伏せ、髪の毛を握った手を胸に抱いた。

「約束だよ……。待ってて、クラン……」

噛みしめるようにつぶやいて、深く深呼吸した。

< 243 / 267 >

この作品をシェア

pagetop