鏡の国のソナタ
素奈多は、息が止まりそうだった。

まだ十七だった少女の頃の、眩暈がするほどの激しい恋心が、爆発するように胸によみがえってきた。

彼に会うことだけを夢見て、脇目もふらずにがんばってきた。

自分でも、どうしてそんなにこだわるのかと立ち止まって悩んだこともあった。

もちろん、彼のほうが忘れてしまうこともあると思っていた。


怖かった。


自分だけの想いが空回りしているのかもしれないと、ずっと怖かった。

「ありがとう。ドクター佐藤の研究室まで案内お願いします」

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