鏡の国のソナタ
ポケット?


素奈多は、みゃあみゃあ言いながらすり寄ってくるキジタロー……? をしりめに、床を這ってクローゼットまで近づいた。

中をのぞき込む。

猫が潜んでいたコートの陰に、淡いベージュの小さなかけらが落ちていた。

欠けた下敷きの破片のような……。

薄手の湯飲み茶碗のかけらのような……。

手にとってためつすがめつしながら、反対の手でクローゼットに吊った上着の、ポケットを探った。

今日、学校へ着ていった綿のジャケットだ。

ポケットにつっこんだ指先に、ザラッとした感触が触れた。

あわてて、手をひっこめた。

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