鏡の国のソナタ
「みゃう~」

足に、猫が頭をすりつけている。

キジトラの頭に視線を落とした。

あり得べからざる考えが、脳裏をよぎった。


「まさか……、生まれた……?」


素奈多は、自分で吐き出した言葉におののいて、ストンとしゃがみこんだ。

甘える猫を抱き上げる。その無邪気な顔を、まじまじとのぞき込んだ。

「おまえ、ほんとに卵から生まれたの?」

「みゃ~う?」

語尾を上げるようにして首をかしげるキジトラの猫は、どこから見ても、ほんとに、あの野良猫のキジタローとうりふたつだった。

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