鏡の国のソナタ
ピチャピチャと音をたてながら、猫が皿のミルクを美味しそうに飲んでいる。

素奈多は、床に体育座りをしてその様子を見守りながら、ぐるんぐるん空回りする頭の中を整理しようとしていた。

バラバラになった卵の殻を左手で並べながら、右手に握ったもうひとつの卵に視線を移した。

あのとき、どさくさまぎれに、転がった卵をもうひとつ手に握りしめてきたのだ。

このマンションの玄関はオートロック式で、迷い猫が簡単に入り込めるような構造ではない。


どこから見ても、キジタローそっくりだけど……。

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