鏡の国のソナタ
枕……。


サラサラの茶髪が、間近にあった。

枕が茶髪?

そんなわけがなかった。

素奈多は、ありえべからざる現実に動転して、その枕……だったはずのものを抱きしめたまま硬直してしまった。

「ねぼけてんじゃねぇよ」

再び、枕が口をきいた。

長いまつげ、整った鼻筋、頬に光る産毛までが超ドアップで眼前にある。

抱きついた胸のあたりが、妙に生々しい感触で、素奈多は冷や汗を流した。

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