鏡の国のソナタ
素奈多は、あわてて手にした卵をカーディガンのポケットに押し込み、足下に転がっている卵をささっと拾い上げると、あわてて裏門の陰に身を隠した。

反射的に裏門の陰に身を潜めてしまった自分の行動を省みて、素奈多は情けなくなった。


――なんで、ゴミを片づけてただけなのに、コソコソしなきゃなんないのよ……。


まったく、これではまるで泥棒かストーカーである。

いや。

ストーカーというのは少し当たっているかもしれない。

片想い中の女の子は、多かれ少なかれそういうものだ。

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